春の訪れ。
出会いの季節。
桜が咲き誇る季節。
そんなある日、僕と君は出会った。
ボロボロの段ボールの中に、君が居た。
とても小さく、とても弱く、とても儚い命がそこにはあった。
僕は君を抱え上げる。
「にゃあ」
君は嬉しそうに鳴いた。
そこから僕と君の生活が始まった。
小さな君はすくすく元気に育っていく。
とても君の事を愛おしく思っていた。
毎日がとても幸せだ。
そんなある日。
僕が少し目を離してしまったせいで、で君はどこかへと行ってしまった。
どれだけ走っただろう?
必死に走って、探して…それでも、見つからなくて…。
毎日も何回も探し続けた。
僕の心は絶望の淵へと落とされた。
気が付けば満開の桜だったのに、桜が散り始めた季節になっていた。
心も身体もボロボロになった僕は、気が付くと君と初めて出会った場所に居た。
君と過ごしていた色々な思い出が出てくる。
もう二度と会えない。
とてつもなく自分が情けない。
涙が溢れて止まらなくなり、俯く。
すると。
「にゃあ…」
微かに聞こえた、聞きなれた鳴き声。
僕は鳴き声のする方へ、一歩ずつ歩き始める。
そこには、ボロボロの君がいた。
不安が安堵に変わった瞬間だった。
急いで駆け寄って僕は言う。
「ごめんね、僕のせいでこんなにボロボロになって…早くお家に帰ろうね…!!」
君を抱き上げた時、心なしか嬉しげに君小さく、「にゃあ」と一言鳴いて。
僕の腕の中で静かに息を引き取った。
僕は君に何もしてあげられなかったけれど、君は僕に生きがいをくれたね。
もうここに君は居ないけれど、僕の中で桜が咲き誇るこの場所で。
心の中で生き続けてるから。
さよなら、またね。
僕の大切な家族の、桜。
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君を想うと心が痛む。
いつもの日常。
転校生としてやって来た君をみて、僕は心がワクワクした。
授業も頭に入らず、君を目で追いかける。
君はすぐに人気者になった。
僕は根暗で、勇気がなく、君を見ていることしかできない。
とある日の事、その日は雨だった。
傘を忘れていた僕は、どうしようかと思い悩んでいた。
「そこの君!」
背後から突然の声にびっくりした。
そこに居たのは憧れの彼女。
「これ、使って?」
そう言って彼女は僕に傘を差しだした。
「君はどうするの?」
戸惑いながらそう聞くと。
「私は折り畳み傘があるから」と笑顔で。
「また明日ね!」
と、行ってしまった。
僕は確信した。
僕は君が本当に大好きだと。
これが恋の始まり。
どんどん君は僕から離れていくんだね。
もう、手をどれだけ伸ばしても、縮まらない君との距離。
今更辛いなんて、言えない。
自らが下した決断だから。
だけど…僕には君が必要なんだよ。
「君が悪いんだからね…?」
誰に届くかもしれない言葉を呟き、君を刺殺した。
昔話をしよう。
僕の悲しくも、楽しかった人生について。
突き刺さるような冷たい風が吹く冬。
僕はそんな日に産まれたらしい。
僕は僕自身にさほど興味がない子だった。
何故?と問われると、おそらく…。
父もいない僕には母だけだった。
母はとても愛情深い人だった。
僕はそんな母が心から大好きだった。
だけども母は僕を置いて病気を患い、亡くなってしまった。
僕がまだ幼い頃に、居なくなった母というたった一人の家族。
そんな僕を引き取ってくれたのは母方の祖母だった。
そんな祖母は僕にとても厳しかった。
髪の毛を引っ張り上げひっぱたくのは日常茶飯事だった。
「弱音を吐くな」
「我儘を言うな」
この程度なら耐えれた。
だけどある日。
いつものように寝ようとすると泣いている声が聞こえた。
部屋からこっそりのぞいてみると。
「娘が亡くなったせいで祖母が苦しい思いをしている」
と嘆いている祖母の姿を目にした。
そんな光景をみて初めての気持ちが出てきた。
この世界に産まれ、生きる資格がないのだと思った。
そんな感情しかなかった。
(僕は居ならない子なの?)
幼い僕はそんな事を考え続けていた。
学校でも僕は母が亡くなったショックで友達とよべるひとがいなかった。
酷い虐めにも耐えた。
子どもながらにして祖母にこれ以上迷惑をかけたくなかったから。
門限を過ぎていると怒られたとき。
僕は嘘をついた。
「友達と遊んでいて…楽しくて、門限破ってごめんなさい」
真っ赤な嘘だ。
いつも公園で、一人で泣いて泣いて、涙が枯れるまで泣いてから帰路していた。
僕は手の掛からないいい子を演じていた。
だけど、変わらず祖母は何かにつけて僕を邪険に扱う。
だから。
(死のう。)
そう思ったんだ。
母に会いに行ける。
これで虐めも無くなる。
祖母の嫌味も聞かなくて済む。
だから、さよなら。
僕は母に会いに逝きます。
少ししか生きていなかった世界だけど、疲れる事ばかりだったけど。
それでも人生を満喫したつもり。
これで終わり。
ある雨の日、僕は雨に濡れながら。
ぐちゃぐちゃな気持ちを抱えて。
こんな土砂降りの中で。
我慢すれば、いつかは晴れる日がくるのだろうか?
そして、虹は掛かるのだろうか?
僕はそうなりたい。
この心はなんて表せればいいのだろうか?
「愛してる。」
雨が止まない天気の中、ぽつりと声に出してみる。
雨音で消されようとも、僕は君を心から愛している。
できることなら、君と同じ気持ちなら。
理解したくなかった。
だけど、どうしようもなく、しょうがない。
君は僕を見ないように家を出ていく。
ふわりと香る君の匂い。